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がんの犬に炭水化物は与えてはいけない?誤解と正しい考え方

はじめに

「がんの犬には炭水化物を与えてはいけない」

そんな言葉を耳にして、不安になったことはありませんか?

心配のあまり、ごはんからお米やお芋を完全に抜いてしまう飼い主さんも少なくありません。

でも、実はこの“思い込み”が、わんちゃんの体を弱らせてしまうこともあるのです。

今回は、炭水化物に関する誤解と、愛犬の体を守るための正しい食事の考え方についてお伝えします。


よくある誤解:「がん細胞は糖をエサにするから炭水化物は危険」

脳はグルコース、つまり糖質をエネルギー源としています。

脳は脂肪を使えないため、体は血糖値を一定に保つしくみを持っています。

もし食事から糖質をとらなくても、体は筋肉を分解してアミノ酸から糖を作り出します(糖新生)。

つまり、炭水化物を抜いてもがん細胞は体内から糖を調達できてしまうのです。


炭水化物を完全に抜くことの危険性

炭水化物をゼロにしてしまうと、健康な細胞まで栄養不足になります。

起こりうるリスク

*筋肉量の減少

*体力の低下

*免疫力の低下

*痩せやすくなる

結果として、治療の継続や生活の質に悪影響を及ぼすこともあります。

「良かれと思って抜いた炭水化物」が、かえってわんちゃんの体を弱らせてしまうのです。


炭水化物の上手な取り入れ方

大切なのは「炭水化物をゼロにしないこと」「消化の良い食材を選ぶこと」です。

おすすめは…

*穀類 → 玄米、発芽玄米、雑穀、そば、全粒粉小麦

*いも類 → さつまいも、じゃがいも、やまいも

*その他 → とうもろこし

これらをタンパク質や野菜と組み合わせ、バランスを意識した食事にしましょう。


まとめ

「がんの犬には炭水化物を与えてはいけない」というのは誤解です。

炭水化物を完全に抜いてしまうと、健康な細胞まで弱らせてしまうリスクがあります。

炭水化物は悪者ではなく、上手に取り入れることで体を守る味方になります。


最後に

愛犬が病気のとき、飼い主さんは「少しでも良いことをしてあげたい」と願うものです。

だからこそ、不安な情報をそのまま信じるのではなく、ぜひ獣医師や専門家に相談してくださいね。

今後も「がんの犬でも安心して食べられるごはんやおやつ」について発信していきます。

ご不安やご質問があれば、どうぞお気軽にお問い合わせくださいませ。


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参考文献

*National Research Council (NRC). Nutrient Requirements of Dogs and Cats. National Academies Press, 2006.

*Hand MS, Thatcher CD, Remillard RL, Roudebush P, Novotny BJ. Small Animal Clinical Nutrition, 5th Edition. Mark Morris Institute, 2010.

*日本獣医がん学会「犬のがんと栄養管理」講演資料

*獣医師監修:Pet Nutrition Guidelines(アメリカ獣医栄養学会資料より)