第1回和食サミット① 千年の一滴 だし

先日(8/19)行われた、第1回和食サミットに参加。
この中で日仏合作ドキュメンタリー映画「千年の一滴 だし しょうゆ」が上映されるのが、参加の一つの目的でした。

日本の味の基本、だし

1500年前の仏教の禁止令のもと、肉に代わるうまみを探しもとめた人々が、およそ千年をかけて日本の自然からひきだし日本の自然を凝縮したものがだし
だしをめぐる、
漁師・農家・禅寺・料亭・科学者の営み、自然からうまみのエッセンスを取り出してきた日本人の知恵が詰まったこのドキュメンタリー映画が、日仏合作という事に驚きます。

そして、日本より先にフランスで上映され、反響が凄く9回も再上映されたとのこと。
このドキュメンタリーを観ると、そんな反響にもうなずけます。

 

知床の流氷がの動きや流氷から溶け出すプランクトンで、育つ昆布

一度乾燥させた昆布を再び浜に並べ夜露を含ませ湿らせる。

この時、細胞がこわれオーシャン臭という昆布独特の強烈な臭みが抜け出て、香り(うまみ)が生まれる。まさに、夜露の魔法です。

江戸時代に紀州の漁師甚太郎が燻製で魚肉中の水分を取り除く燻乾法を考案したことから鰹節の歴史が始まる。

ドキュメントでは、現在では十人に満たない古来からの作り方をしている、鹿児島県枕崎市の今給黎氏の鰹節作りを紹介。

焙乾には、カシやクヌギが円やかな香りがして良く、良いカビ菌が住みつき、その菌をゆっくり育てていく。

タイミングが遅いと、良いカビ菌も拗ねた悪いカビになるという、真剣勝負の世界。

カビ付けと天日干しを三回繰り返し、やがて琥珀色になり鰹節どうしをぶつけると、「キンキン」という澄んだ音になり、断面はルビーのようなガラス質!まるで宝石のような美しさに仕上がります。

仏教と深く結び付いただしは、肉食禁止のもと鰹節ではなく、椎茸がその役割を果たします。

曹洞宗を開いた道元禅師は、中国で、禅における食の考え方も学び、「典座教訓」に食に関する本も著す。*典座(てんぞ)とは、禅宗寺院のおける食事を司る役職のこと。
興味深かったのは、
一般に知られている食物の総称である五味(酸味・苦味・甘味・辛味・塩味)がありますが、『南本涅槃経(なんぽんねはんぎょう)』には六味と記され、六つ目が淡味(たんみ)であり、だしの事を指すということです。

 

椎茸に菌を詰める作業では、木の幹に斧を入れ樹液の味を確かめ、樹液が甘い幹は養分たっぷりの幹だという。

そして、幹に耳をあて樹液の音を聴き、樹液の流れの音が止まったら、木を伐り、乾燥させる。

乾燥させた原木に切れ目を入れて胞子がたくさん根付くようにする「鉈目法」(なためほう)という手法をとるのですが、この切り込むタイミングを誤ると、木が菌を寄せ付けない成分をだすという、生産者の自然と一体化した作業に、そのご苦労と素晴らしさを感じます。
伐採した後の山に火をつけ焼き畑を行い、焼かれた木が無菌状態になりどこからともなく菌がやってきて、新しい胞子が切株につく。このことを「ホダが行った」「ホダが来た」と言うそうです。なんだか温かい言葉です。

だしの世界は日本そのもの。

だしが誕生するまでに、たくさんの知恵が積み重なっていることを、日本人として誇りに思うと同時に、繋げていく任務を感じました。